院長コラム

夜中に子供が耳が痛いと泣くとき

耳鼻の病気急性中耳炎夜間に耳を痛がる

夜中に耳が痛くなったとき. 子ども(こども)はよく耳痛を訴えます。それは、決まって夜間なのです。「中耳炎」だとあわてて病院を探して、救急病院につれて来られるご両親が多いようです。

中耳炎は急ぐ病気ではありません

耳が痛くて受診する子どもの半数は中耳炎です。しかし、耳の痛みはすぐに消えてしまい診察のときに耳の痛みがあることはまれです。
中耳炎の診断や治療が遅れると耳が聞こえなくなると心配されているようです。しかし、診断や治療が一日遅れても全く心配は要りません。
ときには、耳漏(耳だれ)が出ることもありますがこれも心配は無用です。

鼓膜切開を急ぐ必要はありません

救急病院で急いで鼓膜切開を受ける必要はありません。耳痛は鼓膜の充血や中耳内の膿による圧迫で起こります。
鼓膜の充血には切開は無効です。また鼓膜を圧迫している膿も、中耳の内圧が高くなると、耳管から鼻に流れ出すため痛みは自然に治まることがほとんどです。

痛み止め(解熱剤)だけでいいですよ

耳痛があるときは解熱剤のアセトアミノフェン(アンヒバ、カロナールなど)やイブプロフェン(ブルフェン、ユニプロンなど)を投与します。アセトアミノフェンでは通常使用量の1・5倍ほど(体重10kgでは150mg、体重15
kgでは200mg)、イブプロフェンでは体重10kgで50mg、体重15kgでは75mgほどを使用します。痛みは30分ほどで治まります。耳だれ(耳漏)が出てきたときはガーゼでふき取り、翌日かかりつけ医を受診してください。

中耳炎の治療方針

オランダの治療方針「最初の2~3日は経過観察だけ。耳痛や発熱が続くときにだけ抗生剤を投与。その後も症状が続くときには鼓膜切開をおこなう。耳ダレは2週間までは経過をみる」が、世界中で注目されています。
世界中で行われた多くの研究結果から、
~中耳炎の90%は無治療で治る。
~A抗生剤が必用なのは10%程度。
~B鼓膜切開が必要となるのは1%以下
であることがわかっています。問題は、最初の診察のときに、この中耳炎は自然に治るのか?抗生剤が必用になるのか?鼓膜切開が必要になるのか?を判定する方法がないことです。全員に抗生剤を飲ませると90%の子どもは必要のない抗生剤を飲むことになり、全員に鼓膜切開をすると99%以上の子どもは必要のない鼓膜切開を受けることになります。オランダの治療方針は無駄な治療を避けるために最も合理的な方法だと考えられています。
小児科医の仲間と「小児上気道炎および関連疾患に対する抗菌薬使用ガイドライン」を作成してインターネットで公開しています。この中で中耳炎の治療についても詳しく記載しています。どうぞご覧ください。

※ 本コラムの掲載内容は当時の小児医療から記載しているものです。現状と異なる場合もございますので、ご了承ください。