院長コラム

子供の副鼻腔炎 (蓄膿)の治療は必要ですか?

耳鼻の病気副鼻腔炎

子供(子ども,こども)の蓄膿(副鼻腔炎)の治療は必要なのでしょうか? ほとんどが自然治癒します。鼻水が長く続ぎ、「あおばな」になると蓄膿を心配して、抗生剤を飲ませないと治らないと思っているお母さんが多いようです。

「あおばな」はバイ菌?

「あおばな」は鼻水の中に細菌がたくさんいるから青色が付いていると思われているようです。
しがし、これは間違いです。鼻水が出てから時間がたつと、鼻水の中に白血球が増えてぎて青色が付いてくるのです。細菌が原因なのではなく、鼻水が出だして時間が経過しただけなのです。

蓄膿は病気ですか?

子どもの副鼻腔炎(蓄膿)について、海外がらたくさんの研究が発表されています。普通、副鼻腔炎の診断は顔のレントグン撮影で行われていますが、過剰な診断になりやすい欠点があり、正確に診断するにはCTやMRが必要です。2003年にフィンランドから発表された、MRを使った研究に世界の医師は驚きました。
その内容は、カゼの子どもたちの副鼻腔の状態をMRを使って繰り返し見ていったものです。60%の子どもたちは一時的に副鼻腔炎になるのですが、2週間後には治療しなくても自然に治っていました。
このように、普通のカゼの後によくみられ、自然に治っていく「ありふれた状態」を「病気」としてよいのでしょうが? 「病気」ではなくカゼのひとつの「症状」と考えるほうが適切なようです。

検査は必要ですか?

米国のレントゲン学会は、小児に対してレントゲンによる副鼻腔の検査は不要と勧告しています。正確な診断が難しく過剰診断になりやすいからです。また、放射線による被曝を避けるためです。MRには被爆の心配はありませんが高額です。
被爆の心配もなく費用も安い検査には超音波(エコー)があります。

治療は必要ですか?

「カゼ」の後の副鼻腔炎に抗生剤による治療をしても効果がないことは、たくさんの研究がら解っています。ほとんどの副鼻腔炎は治療してもしなくても自然に治ってしまうのです。「あおばな」や「咳が続く」だけの副鼻腔炎に抗生剤による治
療は不要なのです。抗生剤による治療が必要となるのは、顔の腫れや痛みがあるような重症の副鼻腔炎だけです。幸いにこのような副鼻腔炎は子どもでは稀です。

抗生剤の少量投与は?

子どもの副豊腔炎に対してある種の抗生剤(クラリスやクラリシッドなど)を少量だけ長期に投与する治療法が提案されています。しかし、このような抗圭剤の長期投与が、抗生剤が効かない耐性菌を誘導する危険性が指摘されています。また、子どもでの有効性もはっきりしていません。このため、治療をするとしても短期間の治療にとどめておくのが賢明です。

そのほかの治療は?

副鼻腔炎の治療に上顎洞の洗浄やアデノイド切除手術があります。しかし、これらの治療を行っても行わなくても、ほとんどは10歳までに自然に治癒することが解かっています。ますます副鼻腔炎に積極的な「治療」の必要はなくなってしまいますね。

※ 本コラムの掲載内容は当時の小児医療から記載しているものです。現状と異なる場合もございますので、ご了承ください。