院長コラム

新型インフルエンザ

新型インフルエンザに負けない!

新型インフルエンザが大流行です。子どもが熱をだすと、急いでインフルエンザの検査を受けて、タミフルやリレンザをもらうのが当たり前のようになっています。このため、急患センターは発熱の子どもで満員です。急いで病院へ行く必要があるのでしょうか?

新型インフルエンザの合併症は?2つの合併症があります。

呼吸障害 発熱の直後から24時間以内に発症します。呼吸が速くなり、息苦しくて眠れなくなったりします。喘息を持つ子どもによくみられます。

インフルエンザ脳症 発熱から24時間以内に発症します。痙攣、意識がなくなる、異常な言動などで始まります。痙攣は熱性痙攣とは違い長く続きます。意識がなくなると、名前を呼んでも、揺さぶっても反応がみられません。異常言動では、いない人やアニメのキャラクターが見えるなどの幻覚がよくあります。また、ひどく怯えることもあります。

薬で合併症は防げるのか?

残念ながら、早期に病院を受診し、タミフルやリレンザを早期に開始しても合併症は防げません。タミフルやリレンザには早期の効果がなく、48時間以降に解熱効果が見られるだけです。しかし、ほとんどの合併症は発熱から24時間以内に発症するからです。

合併症を防ぐには?

確実に予防できる方法はありませんが、いくつかの対策は考えられます。

呼吸障害:喘息を持つ子どもによくみられます。このため、喘息を持つ子どもでは、熱に気づいたら、すぐに喘息予防の内服や吸入を開始しましょう。

インフルエンザ脳症 脳症は熱が高いほど、特に40℃を超える高熱のときに発症しやすくなります。脳症の一部は脳の温度が高くなることで発症します。このため、脳の温度を積極的に下げることは大切です。しかし、解熱シートを額に貼っても意味がありません。冷蔵庫の中を温めるのにドアにホッカイロを貼るようなものです。脳を冷やすには、冷たくした血液を脳にたくさん流す以外に方法はありません。血液を冷やすには、薄着にして皮膚を直接空気にさらすことが大切です。毛布で包んだりして体を温めるようなことは絶対にしないでください。脇の下など体の一部だけを冷やしても効果はさほどありません。また、血流を増やすためには、水分を十分与えることが必要です。

大切なことは?

熱がでたときに、すぐに病院を受診し、タミフルやリレンザを早く開始しても合併症は防げません。家庭で十分に水分を与え、薄着にしておくことがはるかに大切です。喘息があれば予防薬を開始してください。急ぐ必要があるのは、呼吸が苦しいとき、痙攣が続くとき、そして意識がはっきりしないときだけです。

※ 本コラムの掲載内容は当時の小児医療から記載しているものです。現状と異なる場合もございますので、ご了承ください。