院長コラム

赤ちゃんにビタミンK2シロップの毎週投与を!

赤ちゃんの脳内出血の予防

 元気がないという理由で私のクリニックを受診した2か月の赤ちゃんの状態が悪いため、こども病院に緊急入院していただきました。診断はビタミンKの欠乏による脳内の出血でした。ビタミンK欠乏による脳内出血では15%が死亡し、50%に後遺症が残ります。

ビタミンKが欠乏すると…

 ビタミンKは血液を固めるために必要なビタミンなので、ビタミンKが不足すると出血しやすくなります。特に、生まれて3か月までは脳内での出血が多く、命に関わることがあります。

 人間はビタミンKを作れないため、食べ物やビタミンKを作る腸内細菌からビタミンKを摂っています。ビタミンKが不足する主な原因は以下の3つです。

①母乳栄養の赤ちゃん:母乳中のビタミンKはミルクの1/5と少ないためです。
②肝臓に異常がある赤ちゃん:ビタミンKの吸収が悪くなるためです。
③抗生剤を飲んだ赤ちゃん:抗生剤でビタミンKを作る腸内細菌が死んでしまうためです。

1980年までは全国で400人ほどの赤ちゃんがビタミンK不足による脳出血を起こしていました。このため、1983年からビタミンK2シロップの3回投与(生まれた直後、産科退院時、1か月検診時)が始められ、1990年には年間40例程度まで減ってきましたが、まだゼロにはなっていません。

海外の対応

 海外では、日本よりビタミンKを多く投与する方法が行われています。
① 生まれてすぐにビタミンKの筋肉内注射をする。
② ビタミンKを生後3か月まで毎週飲ませる方法。
 この2つです。そして、このような対応をしている国ではビタミンK欠乏による脳内出血は事実上ありません。日本で採用しやすい方法は②の方法です。

K2シロップの毎週投与へ

 ビタミンK欠乏性の脳内出血がみられたため、福岡市の小児科医会と産婦人科医会で協議が行われ、生後3か月までビタミンKシロップを毎週飲ませる(計13回)ことを推奨することになりました。ただ強制ではないため、従来の3回投与を続けている施設や投与回数が少ない施設もあります。しかし、できるだけ13回投与の方式が広がることが望まれます。ビタミンK2シロップを毎週飲ませる方式は、すでに山口県や北九州市では全ての産科施設で行われていて、急速に全国にも広がってきています。
 日本小児科学会と産婦人科学会もビタミンK2シロップを毎週飲ませる方法への変更を検討しています。

全国に広げたい

 産業医科大学の前小児科教授の白幡先生が中心となりビタミンKの毎週投与を提唱されましたが、なかなか普及しませんでした。今回は全国に広げ、脳内出血で苦しむ赤ちゃんをゼロにしたいと思っています。

※ 本コラムの掲載内容は当時の小児医療から記載しているものです。現状と異なる場合もございますので、ご了承ください。