院長コラム

おたふくかぜワクチンと水痘(水ぼうそう)ワクチンの2回接種

ワクチン(予防接種)

●麻疹・風疹ワクチンからの経験

 1歳のお誕生日になったらできるだけ早く生ワクチン(弱毒化した生きたウイルスを使うワクチン)の麻疹・風疹混合ワクチンと水痘ワクチン、それに任意接種(自費となります)のおたふくかぜワクチンの同時接種が薦められています。
 麻疹ワクチンと風疹ワクチンは以前はそれぞれ1回の接種でしたが、2006年から2回接種となりました。1回接種のころは麻疹に年間10~20万人がかかり40~50名が亡くなっていました。しかし、2回接種が開始された2年後の2008年には患者数が1万人、2009年には700人、2010年以降は500人以下になりワクチンの2回接種の有効性が証明されました。
 生ワクチンの1回の接種では十分な免疫が得られないことがあり、途中で免疫が切れ有効性がなくなることもあります。このため麻疹・風疹ワクチン、おたふくかぜワクチン、水痘ワクチンなどの生ワクチンでは2回の接種が必要です。

●おたふくかぜワクチン

 日本ではおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は普通に流行し年間100万人がかかっています。おたふくかぜの一番重症な合併症はワクチンを受けないでかかった場合に1000人に一人の割合で発症する難聴です。またこの難聴は生涯治りません。日本では毎年650名ほどがおたふくかぜによる難聴になっています。当院でも子どもさんが2名、子どもさんからかかったお祖母さん1人、父親が1人難聴になられました。このような合併症があるため、海外の多くの国でおたふくかぜのワクチンは定期接種として2回接種の対象となっています。
 日本では自費のワクチンなので通常1回の接種だけの方が大半ですがワクチン1回接種後の有効率は70~80%で、2回接種でやっと90%を超えます。
 初回接種は1歳時に麻疹・風疹混合ワクチンと同時に接種し、2回目は5~6歳時の麻疹・風疹混合ワクチンの2回目の接種と同時接種するのが勧められます。

●水痘ワクチン

 水痘の死亡率は冬に流行するインフルエンザよりも数倍高いことが知られています。また成人では水痘肺炎や脳炎などの重症例が多く、入院率が10倍ほど高くなります。おたふくかぜと同様、水痘ワクチンも海外では定期接種として2回接種されています。
 日本では自費のワクチンなので通常1回接種ですが,1回接種での有効率は50%程度と低いため早期の2回接種が必要です。
 初回接種は1歳時に麻疹・風疹および水痘と同時に接種し、2回接種は初回接種から6ヵ月(4~12 ヵ月)後が薦められます。

※ 本コラムの掲載内容は当時の小児医療から記載しているものです。現状と異なる場合もございますので、ご了承ください。