小児喘息(子供の喘息)に長期治療は必要ですか?
●喘息の軽症化
喘息治療の進歩で、小児科医でも重症の喘息発作をみることが稀になり、喘息の入院もほとんど経験しなくなりました。15歳未満の喘息死も1990年が84名、2000年が46例、2010年が6例と激減しています。
私が診ている喘息児のお母さんも「喘息は本当に軽い病気になりましたね」と話されていました。このお母さんも子どものころ喘息があり、夜間の発作のときは母親に自転車に乗せてもらい病院に行き、吸入と点滴を受けてそのまま入院することを繰りしたそうです。このような喘息児を最近は見ることがなくなりました。
●治療薬の進歩
現在の喘息治療薬には、発作時に使用する気管支拡張薬(内服薬と吸入薬)と、発作予防のための吸入ステロイド薬と内服の抗ロイコトリエン薬(オノン、キプレス、シングレア等)の3種類があります。特に吸入ステロイド薬で喘息を強力に抑え込むことができるようになったことが喘息の軽症化の理由です。しかし、喘息薬で喘息体質まで治すことはできません。喘息薬で発作を抑え込み、喘息が自然治癒するのを待つことが現在の喘息治療でできることです。
喘息発作が多かった時代には、長期にわたる治療が必要でした。しかし、喘息が軽症化してくると、過剰な治療を避け、安全でかつ最小限の治療法が望まれます。
●乳幼児の喘鳴の治療は?
2~3歳までの乳幼児の25%ほどに繰り返す喘鳴(ぜーぜー)がみられます。ほとんどがウイルス感染によるカゼが原因です。一部は将来喘息になる可能性がありますが、大部分は成長とともに治っていきます。この乳幼児の喘鳴を喘息の始まりとして治療すべきでしょうか?
私は過剰な治療を避けるため、呼吸困難を伴う明らかな喘息発作が起こったときから喘息の治療を開始するのでよいと考えています。
●喘息の短期療法
従来、喘息薬は長期投与するのが原則でしたが、一部の重症の喘息児を除いて、ほとんどの喘息児では発作が起こったとき、あるいはカゼを引いて発作が起こりやすい時にだけ投薬しても、効果はほとんど変わらないことが解ってきました。私も長期療法を避けるために、可能な限り発作時のみの治療にしています。
●短期療法(間欠療法)のすすめ
治療薬の進歩で子供の喘息は軽症化し,重症発作はほとんどなくなりました。しかし、喘息を治すためには長期間の治療が必要だとして,何年にもわたる予防薬(内服薬や吸入薬)による治療がいまだに一般的です。このような長期療法の問題点は,喘息発作が無いことが治療効果なのか?あるいは自然に治ったのか?が解らなくなり,不必要な治療が継続されやすいことです。また,長期の喘息薬の使用による副作用の問題もあります。
短期療法(間欠療法)とは,吸入ステロイド薬と吸入気管支拡張薬を併用した必要時(発作の初期や発作が誘発されやすいカゼのとき)のみ1~4週間の治療を行う方法で,子どもの喘息治療が安全で簡単になります。
詳細は以下のPDFファイルをご覧ください。
小児(子ども)の気管支喘息治療の簡素化と短期化を目指して