院長コラム

育児書を読んでみませんか!

乳幼児健診

 最近育児書があまり読まれていません。先日取材にこられたある育児情報誌の編集長のお話では、育児雑誌はよく売れているそうです。イラストや漫画もたくさんあり楽しめます。おかげで私の解説記事もずいぶん読みやすくなっていました。しかし、育児雑誌ではやはり断片的な育児の知識しか得られません。そしてあまりの情報の多さに児育のいろいろな段階で、なにが大切なのかを見失ってしまいそうです。

 すばらしい育児書は、赤ちゃんの発達の各時期でいちばんの大切なことを的確に指摘してくれます。そしてお母さんの育児への深い自信を与えてくれます。

 私は大学で「スポック博士の育児書」など内外の育児書を学生と一緒に読む経験をしました。そこで学んだことは、育児はその国の伝統から離れられないことです。

 日本の育児ではあたりあえの離乳食、欧米には対応する考え方はありません。育児書は外国のものではだめなようです。

 日本にもすばらしい育児書があります。松田道雄先生の「育児の百科」(岩波書店)です。三十年以上にわたり多くの人に読み続けられています。子どもの立場から育児を考えること、孤立した母親を支援することの二つがこの育児書の立場です。さらに保育園での集団保育の重要性、父親の役割の大切さも当然のこととして書かれ、今でも驚くほど新鮮な内容です。

 私は子育てのとき、そして小児科医になった今でもこの本を読み返して、子どものこと、親であることを教えられています。また内容、特に子どもの病気については最新の医学論文のとり毎年改訂されています。

 できるだけ多くのお母さん、お父さんに読んでもらいたい一冊です。一見、分厚く読みにくそうに見えますが、忙しい育児の合間にも読みやすくなっています。

※ 本コラムの掲載内容は当時の小児医療から記載しているものです。現状と異なる場合もございますので、ご了承ください。