院長コラム

育児ってなに?

乳幼児健診

 世界にはいろんな育児の方法があります。南米では赤ちゃんを板の上に縛ったままで育てる風習があるところがあります。家の中で一番きれいな布をかけて、赤ちゃんを部屋の真ん中で寝かせています。大勢の家族がいつものぞいて声をかけてあやしています。岩場で石作りの家なのです。赤ちゃんの安全のためなのでしょう。でも一歳になって自由にすると、お座りもハイハイもしていないのに、一週間で歩き始めるそうです。このようにして育てられた子供たちも、やがて険しい自然の山道を自由に歩き回り、たくましく育っていくのです。

 このことは、人間の赤ちゃんの最初の一年間が歩く準備のためにあるのではないことを教えてくれます。反対にもっと大事なことのために一年間は自由に歩けないようにしてあると言ったほうがよいでしょう。では赤ちゃんは何のためにこの一年間があるのでしょうか?赤ちゃんはこの期間お母さんの姿や声を必死で見て聞いて(たとえ短い間でも)、人間の生活をお母さんを通して学んでいるのです。そうして人間としての心や生きていくために必要な知恵を身につけていっているのです。

 さまざまな育児の風習や方法があります。でも私は育児の基本はお母さんの姿を見せること、お母さんの話を聞かせることだと思っています。仕事を持つお母さんは時間に追われています。たとえ短い時間でもお母さんの笑顔を見せて、いろんなことを話しかけて下さい。ときには赤ちゃんを抱いて広い青空も一緒に眺めましょう。

 赤ちゃんが百歳になった時でも、もしも心の奥が覗けるなら、そこには今のお母さんの姿がきっと見えるはずです。生まれたときア全くの”無”だった心をともに育ててきたのですから。だから子どもはお母さんが大好きです。悲しいけれど父親はかないません。

※ 本コラムの掲載内容は当時の小児医療から記載しているものです。現状と異なる場合もございますので、ご了承ください。