院長コラム

子どもの中耳炎

中耳炎はお母さんを悩ませる病気です。繰り返し起こることも多く、病院通いも大変です。また耳が聞こえなくなるのではと心配されます。

中耳炎は鼓膜の内側の中耳という小さな空間(普通は空気が入っている)に液が溜まり、そこに細菌が入り化膿した状態です。入浴中に耳に水が入って中耳炎になることはありません。中耳内の液は中耳の壁から分泌されるのです。細菌は中耳と鼻の穴をつなぐ細い管(耳管)を通って鼻の穴から侵入します。正常の状態では中耳内の液は耳管を通して流れ出し、逆に鼻側から空気が入ってきます。乳幼児では耳管のはたらきが悪いため中耳に液が溜まった状態(滲出性中耳炎とよびます)になりやすいのです。このとき風邪などで鼻の奥から中耳に細菌が入ると細菌は栄養たっぷりの液の中で簡単に増え中耳炎を起こします。また中耳に空気が入っていると細菌は増殖できずに中耳炎になりにくいのです。このため中耳炎は鼻管が未発達な半年から1歳半の間に多く、3歳を過ぎるとほとんど起こらなくなります。

小児の中耳炎の治療はまだ世界的にも基準がありません。日本では最初に鼓膜切開をすることが多いようです。ヨーロッパでは鎮痛剤や点滴薬をまず投与し、それでも治癒しない時にだけ抗生剤が使用されます。アメリカでは最初に抗生剤を投与するのが一般的で、一部の難治例にだけ鼓膜切開がおこなわれます。私もこの方針で中耳炎を診ています。

各治療方法を比較した多数の研究では、どの方法でも治療成績に差が出ていません。このために治療方針が違っているのが実情です、ただ鼓膜切開を繰り返すと鼓膜が弱くなり大きな穴が残ることがあり避けるようになってきています。

何回中耳炎を繰り返しても心配いりません。難聴になることは通常ありえません。そのつど治療すればよいのです。3歳を過ぎると中耳炎は自然に起こらなくなります。あせらないでその時を待っていてください。

※ 本コラムの掲載内容は当時の小児医療から記載しているものです。現状と異なる場合もございますので、ご了承ください。