院長コラム

食物アレルギー|予防と診断

食物アレルギーアレルギー

食物アレルギーの対応方法が大きく変わってきました。多くの子どもたちが食物アレルギーのために保育園や小学校で食物除去を行っています。
しかし,昔の日本には食物アレルギーはありませんでした。40年前までの日本では4~5か月から離乳食を始めていました。特別な離乳食ではなく,大人が食べている料理のなかで,子どもが食べられそうなものを与える「ありあわせ離乳」でした。半熟卵も普通に食べさせていましたが,食物アレルギーはありませんでした。海外でも,この時代には食物アレルギーは極めてまれでした。なぜ食物アレルギーが増えてきたのでしょうか?

アレルギーへの不安がアレルギーを増やす

30年ほど前から血液検査で食物ごとに特異IgEが測れるようになりました。食物アレルギーがある子どもではIgEが高くなります。ただ,IgEが高くても,ほとんどの子どもにアレルギー症状がないことは無視されて,血液検査でIgEが高ければ食物アレルギーと診断され,その食品を除去する指導が行われるようになってきました。こうして,卵やミルクなどの離乳食の開始が遅くなり,食物アレルギーが増えたと考えられています。

離乳食の遅れが食物アレルギーを作る

海外ではピーナッツアレルギーが多く,米国では2000年にピーナッツクリームは3歳以降から与える指導方針が採用されました。ところが,この後にピーナッツアレルギーの子どもが5倍も増加したのです。このため,他の研究も参考にして,2017年からピーナッツクリームを4か月から開始するように変更されました。

卵も,日本での研究で6カ月からの投与開始で卵アレルギーが減ることが解りました。私たちも全国の20の小児科クリニックが協力して3~4か月から3か月間,卵,ミルク,小麦,大豆,ソバ,ピーナッツの6食品を少量から食べさせる研究を行いました。結果は,早期から6食品を始めた子どもが食物アレルギーになることはほとんどないことが解りました。

食物アレルギーがアトピーの原因? 

以前は「食物アレルギー」が「アトピー」の原因だと考えられてきました。確かにこの2つには関連はあるのですが,アトピーの湿疹部位から食物の微粒子が侵入することが食物アレルギーの原因となることが解ってきました。このため,食物アレルギーの予防には湿疹の治療も大事になります。

食物アレルギーの予防のために

お母さんの母乳で赤ちゃんが食物アレルギーになることを心配して卵や牛乳を控えるのは逆効果です。5か月になったら,なるべく多くの種類の離乳食を食べさせてください。お粥だけでなく,卵ボーロ,ヨーグルト,おうどん,豆腐,お魚などです。ナッツ類も細かく砕けば食べさせることができます。最初は少ない量から始めますが,少しずつ増やしていきます。口の周りが赤くなる程度の軽い症状が出たときには,半分程度に減らして続けてください。これが,食物アレルギーを予防するための唯一の方法です。

※ 本コラムの掲載内容は当時の小児医療から記載しているものです。現状と異なる場合もございますので、ご了承ください。