院長コラム

夜間や休日に熱がでたとき

こどもの発熱(病院のかかり方)夜間に熱が出たときには一般小児科

●子どもの発熱の原因は?

発熱の原因はウイルスや細菌などの微生物の感染がほとんどです。実際には「カゼ」の原因であるウイルスの感染が99%以上です。

●ウイルス感染の熱

ウイルスに抗生剤は効かないため、対症療法しかありません。ウイルスに感染して高熱が出たときは体を冷やしたり解熱剤を使用したりします。熱は免疫ができてウイルスが排除されるため自然に治ります。

●細菌感染の熱

最も重症な細菌感染症は髄膜炎です。脳に細菌が侵入し、脳細胞を破壊します。後遺症で植物状態になったり、死亡したりすることがあります。髄膜炎のときは早期に入院させて、強力な抗生剤を大量に使用する必要があります。治療開始が遅れると予後が悪くなります。幸いなことに、ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンが普及して細菌性髄膜炎は事実上なくなりました。

●熱で治療を急ぐ病気はほとんどありません

熱の原因となるウイルスは無数にあるため、まとめて「カゼ」と診断されます。抗生剤は効果がないため、容態が特別悪くなければ夜間に受診される必要はありません。翌日あるいは休日明けの受診で十分です。わずかですが、細菌感染による熱もあります。比較的多い病気は、溶連菌感染症と尿路感染症です。どちらも、検査で簡単に診断できます。溶連菌は咽の液から数分で診断できます。尿路感染症は尿検査で簡単に診断できます。しかし、子どもでは尿がとれず、すぐに検査ができないことがあります。ただ、どちらの病気も一刻も早い治療が必要な病気ではありません。翌日あるいは休日明けに、検査できちんと診断した後に治療を始めることが大切です。熱があり、一刻も早い治療が必要な病気は細菌性髄膜炎だけです。しかし、ワクチンの普及でほとんど消え去りました。

●肺炎の心配は?

熱が出てすぐに肺炎の心配をする必要はありません。ウイルスと細菌による肺炎があります。ウイルス性の肺炎では熱だけでなく呼吸が苦しくなります。息が苦しくて、食事や睡眠がとれないときには酸素が必要なこともあるため受診が必要です。抗生剤が必要な細菌性の肺炎は「カゼ」に引き続いて発症するため、発熱の直後にはありません。

●早い受診で肺炎や中耳炎を予防できる?

「カゼ」のときに早くから抗生剤を使っても、肺炎の予防はできません。「カゼ」をこじらせるのを防ぐ方法はないのです。肺炎は診断がついてから治療を開始する病気です。中耳炎は鼻水と同じ「カゼ」の症状の一つです。「カゼ」の時に鼓膜を見ると中耳炎が半数で見られます。このような中耳炎は、ウイルス感染が原因なのでほとんどは自然に治ります。抗生剤が必要な中耳炎は稀なのです。急ぐ病気ではないため、痛みがあれば、解熱剤を使って痛みを抑えて様子をみてください。

※ 本コラムの掲載内容は当時の小児医療から記載しているものです。現状と異なる場合もございますので、ご了承ください。