抗生剤(抗生物質)とサミット宣言
抗生剤を50%削減する!
日本は世界有数の抗生剤の大量使用国です。特に乳幼児で強力な抗生剤の使用が多いのが特徴です。このため抗生剤が効かない細菌が急増しています。肺炎球菌やブドウ球菌の過半数は通常の抗生剤で治せなくなっています。今年のサミットで日本政府は抗生剤の使用を50%削減すると宣言しました。
ヒブと肺炎球菌ワクチン
子どもの命に係わる重症な細菌感染症は多くはヒブと肺炎球菌です。この2つの細菌に対するワクチンが普及し、すぐに抗生剤が必要な病気が事実上無くなりました。このため、抗生剤の使用量が大幅に減らせるはずですが、実際には逆に増え続けています。
ヒトと細菌の共存
細菌の一部は病気の原因になりますが、多くはヒトに有益で、咽や皮膚、腸に無数に住んでいます。腸には約5百種類の細菌が住みヒトの体重の2%にもなります。10㎏の赤ちゃんでも200gが細菌なのです。腸内の細菌は病気の原因となる細菌の侵入を防ぐ効果やアレルギーを防ぐ効果があります。
抗生剤による病気
抗生剤は腸内の有益な細菌まで殺してしまい、
さまざまな病気の原因となります。
【頭蓋内出血】
死亡や後遺症が多い病気です。乳児時早期の抗生剤投与でビタミンKを産生する腸内細菌が死滅し、ビタミンK欠乏症になり頭蓋内出血を起こすことがあります。
【幽門狭窄】
胃の出口(幽門)が狭くなり手術が必要な病気です。赤ちゃんがマクロライド系の抗生剤(クラリス、クラリシッド等)を飲むと10倍も発病しやすくなります。
【川崎病】
日本の子どもは世界の10倍以上も発症しています。心臓合併症で突然死することがあります。抗生剤による腸内細菌の破壊が原因と疑われています。
【炎症性腸炎】
慢性の下痢や血便がみられる難治性の病気です。一部は抗生剤が原因とされています。
ウイルスには抗生剤は無効です
咳や鼻水、さらに副鼻腔炎や中耳炎もほとんどは細菌の感染ではなくカゼに伴うウイルスの感染が原因です。ウイルスによる病気には抗生剤は効果がないだけでなく、むしろ有害です。
抗生剤の使用が減らない理由
日本では子どもの日常的な病気、例えば「とびひ」「ものもらい」「副鼻腔炎」「中耳炎」などは皮膚科や眼科、耳鼻科などでも診てもらえますが、海外ではすべて主治医の小児科医が診ています。皮膚科や眼科、耳鼻科などは専門的な検査や手術のために総合病院にだけにあり、子どもの日常的な病気の薬を処方することはありません。
日本では多くの診療科で抗生剤が処方できるため、子どもの抗生剤投与量が世界一多い国となっています。
日本政府の宣言
今年の5月の伊勢志摩サミットで、日本は2020までに抗生剤の使用量を3分の2(主な抗菌薬は2分の1)まで減らすと宣言しました。実現してもらいたいですね。