子供の肺炎での入院は 本当に肺炎?
●日本の子供の肺炎は海外の5倍です
子供が肺炎で入院したとよく聞きます。私がカゼとしてみていた患者も他院で肺炎と診断されて入院されることがあります。 実は日本の子供が肺炎で入院する頻度は海外の5倍です。これはなぜでしょうか?
●肺炎の診断基準がありません
熱が続いて、胸の音が悪く、血液検査で白血球数やCRP値が高値になり、レントゲンの異常があれば肺炎と診断されています。ただ、日本には共通の診断の基準がないため過剰に肺炎と診断されています。
●本来の肺炎は「細菌性肺炎」です
肺炎球菌が主な原因で重症になることがありますが、肺炎球菌ワクチンの普及で激減しました。また、抗生剤が有効なので外来での抗生剤の点滴で治ります。このため「細菌性肺炎」の入院は稀になりました。年長児ではマイコプラズマ肺炎もありますが、症状が軽いため入院は稀です。
●入院となる肺炎のほとんどは「肺のカゼ」です
現在、入院となる肺炎は「ウイルス性肺炎」がほとんどです。RSウイルスやヒューマンメタニューモウイルスなどが主な原因です。血液検査でも異常は少なく、レントゲンの異常も軽いためWHOの基準では「肺炎」と診断できません。このため「肺炎」ではなく「肺のカゼ」と病名を付けた方が適切です。また、「細菌性肺炎」と異なり抗生剤は効果がありません。日本では「肺のカゼ」も「肺炎」と診断されるため「肺炎」が多くなるのです。
●「肺のカゼ」の入院の必要性は?
日本の医療費が安いため、「カゼ」でも熱が続き親の不安が強いときや軽いレントゲンの異常でも「肺炎」として入院となっています。ただ、乳幼児では呼吸困難となり酸素投与のために本当に入院が必要な重症の「肺のカゼ」も稀にあります。乳幼児のカゼで息があらく、ミルクや食事がとれず、ぐったりしているときは注意してください。
●「肺炎」での入院を減らすには
細菌性肺炎の治療に抗生剤は有効ですが、カゼのときに抗生剤を飲ませても予防効果はほとんどありません。さらに、肺炎球菌ワクチンの普及で細菌性肺炎は激減しました。今ではカゼの子供1万人に抗生剤を飲ませて一人の細菌性肺炎が予防できる程度です。しかし、抗生剤を1万人にも飲ませると命にかかわる抗生剤の副作用の方が多くなってしまいます。また、ウイルスに抗生剤は効果がないため「肺のカゼ」の予防もできません。「肺炎」での入院を減らすためには、カゼに抗生剤を飲ませることではなく、小児科医がていねいな診察で親の不安を取ってあげることです。