院長コラム

育児書「育児の百科」を読んでください

乳幼児健診

●育児書と育児雑誌

 最近、育児書がなくなってしまいました。代わりに育児雑誌は増えています。育児雑誌はイラストや漫画もたくさん付いて楽しめます。しかし断片的な知識しか得られません。そして情報量が多いこと、内容が時代の流行に左右されるなどの問題があり、かえって育児でなにが大切なのかを見失ってしまいそうになります。

●「育児の百科」のすすめ

 すばらしい育児書は、赤ちゃんの発達の各時期でいちばん大切なことを的確に指摘してくれます。そしてお母さんに育児への自信を与えてくれます。

 私が世界一と思っている育児書が日本にあります。松田道雄先生の「育児の百科」です。1967年初版刊行から1999年に亡くなられる直前の「定本 育児の百科」まで四十年以上にわたり多くの人に読み続けられています。現在この「定本 育児の百科」は岩波書店から文庫版で出されています。

●松田道雄先生

 松田道雄先生は明治41年生まれで、京都で町の小児科医として診療されていました。59歳で閉院された後は「育児の百科」の執筆と改訂のために全力を注がれ、育児の調査のために各地を訪れ、保育園では保護者や保育士と対話を重ね、そして毎月数十冊の国内外の医学雑誌に目を通すことを亡くなられる直前まで続けられていました。

●お誕生日ばんざい

 この育児書の基本は、子どもの立場から育児を考えること、孤立した母親を支援することの2つです。さらに保育園での集団保育の重要性、父親の役割の大切さも当然のこととして書かれ、今でも驚くほど新鮮な内容です。「育児の百科」を知るために、最初に「お誕生日ばんざい」の章を読まれることをお勧めします。

●お誕生日ばんざいからの抜粋

 人間は自分の生命を生きるのだ。いきいきと、楽しく生きるのだ。生命をくみたてる個々の特徴、たとえば小食、たとえばたんがたまりやすい、がどうあろうと、生命をいきいきと楽しく生かすことに支障がなければ、意に介することはない。小食をなおすために生きるな。たんをとるために生きるな。…

●私と「育児の百科」

 私は自分の子供たちの子育てのとき、そして小児科医として35年を過ぎた今でもこの本を読み返し、子供のこと、親であることを教えられています。できるだけ多くのお母さん、お父さんに読んでいただきたい育児書です。

※ 本コラムの掲載内容は当時の小児医療から記載しているものです。現状と異なる場合もございますので、ご了承ください。