院長コラム

子宮頸がんワクチンの副反応報道

ワクチン(予防接種)

 子宮頸がんワクチンの副作用報道を見かけない日がありません。子宮頸がんワクチンは本当に必要のないワクチンなのでしょうか?

●子宮頸がんとワクチン

子宮頸がんは日本で毎年1万5千人の女性がかかり、3500人が亡くなっています。また、手術の後遺症で多くの方が苦しんでおられます。

 この子宮頚がんはヒト・パピローマ・ウイルスの感染で発病します。子宮頸がんワクチンはヒト・パピローマ・ウイルスの感染を予防し、子宮頸がんの60~90%を防ぐ効果があります。現在120か国以上で接種されています。

●ワクチンの副反応

どんな薬にも副反応の可能性があります。特にワクチンは多数の方に接種するため、ワクチンと関連がない異常(病気)が必ず紛れ込みます。ワクチンと接種後の異常の関連性を証明することは事実不可能なので、接種後の異常の頻度が、自然に発症する頻度以下であれば、ワクチンによる副反応ではないと判断されます。子宮頸がんワクチンの副反応として強い痛みが持続する「複合性局所疼痛症候群」が問題となっています。日本ではワクチン300万回接種で1例程度発症しています。英国でも100万回接種で1例ほどの報告がありますが、英国厚労省はワクチン後の発症率が自然発症率の1/5でありワクチンは安全であると報告しています。本年の6月、世界保健機構WHOも世界で2億本接種された子宮頸がんワクチンの安全性を再確認し、積極的な接種を勧めています。日本以外に副反応を理由に接種を控えた国はありません。なぜ、海外と日本でこれほど対応が異なるのでしょうか?

●ワクチン「ただ乗り」の国・日本

日本でもヒブと肺炎球菌ワクチンが接種できるようになりましたが、この2つのワクチンも接種後の死亡報道で一時中断されました。海外で10年~20年も前から使用され安全性も効果も十分確認されているワクチンを輸入しただけなのに、日本では大変な騒ぎとなってしまったのです。その後、ワクチン接種後の死亡頻度が赤ちゃんの突然死の頻度以下で副反応ではないと判断され再開されました。肺炎球菌ワクチンの開発の際には、効果も安全性も不明なワクチンの臨床治験に米国の赤ちゃんが4万人も参加しています。

 子宮頸がんワクチンの臨床治験にも計4万人が参加しました。ワクチンは多数のボランティアの協力で効果と安全性を確認し実用化されたものなのです。ワクチンの開発に貢献もせず、苦情ばかり言っている国が日本です。日本がワクチン「ただ乗り」の国と呼ばれても仕方がありません。

●公平な報道が必要です

現在の報道は偏っています。子宮頸がんの悲惨さをよく知る産婦人科医の意見も聞いてください。ワクチンを接種するかどうかはかかりつけの医師と保護者・本人が相談して決めていただきたいと思います。

※ 本コラムの掲載内容は当時の小児医療から記載しているものです。現状と異なる場合もございますので、ご了承ください。