風邪(かぜ)に抗生剤(抗生物質)は有害です
米国小児科学会が一般向けに作っているパンフレットの内容を紹介します。
●抗生剤(抗生物質)とは?
抗生剤は強力で大切な薬です。適切に使うと命を救えますが、不適切に使われると危険です。抗生剤をカゼ(かぜ)などのウイルス感染症に使ってはいけません。
●細菌とウイルス
感染症の原因は細菌とウイルスです。実際にはウイルスがほとんどの咳、咽頭痛、感冒(カゼ)の原因です。細菌には抗生剤が有効です。ウイルスには抗 生剤が効きませんが、自然に治ります。
●耐性菌とは?
抗生剤が効かない細菌(耐性菌とよびます)が増えています。耐性菌は通常の抗生剤で殺せません。耐性菌に感染すると、入院治療が必要となったり、どんな治療でも治せなくなることがあります。
抗生剤が使用されればされるほど、あなたのお子さんが耐性菌に感染する機会が増えます。抗生剤が使われると、抗生剤に効く菌(感受性菌)だけが殺され、耐性菌だけが生き残って増殖を続けます。抗生剤を繰り返し使用したり、不適切な使用を続けたりすると、耐性菌が増えることになります。
●抗生剤が必要なときは?
中耳炎:抗生剤が必要な場合は多くはありません。
副鼻腔炎(蓄膿症):濃い緑色の鼻汁(青ばな)のほとんどは副鼻腔炎ではありません。抗生剤は痛みが続く重症例にだけ必要です。
気管支炎:気管支炎に抗生剤が必要となることはほとんどありません。
扁桃炎:ほとんどがウイルス感染症です。溶連菌感染症にだけ抗生剤が必要です。
カゼ:カゼはウイルス感染でおこり、症状は2週間以上続くことがあります。抗生剤はカゼには効果がありません。
●細菌感染の予防効果は?
ウイルス感染症のあとに細菌感染症が続発することもあります。しかし、抗生剤でウイルス感染症を治療しても肺炎などの細菌感染症を予防することはできません。むしろ、耐性菌による感染症を引き起こす危険性があります。
●よくある質問
○抗生剤が効かない耐性菌からどうすればわが子を守ることができるでしょうか?
抗生剤で、ほとんどのカゼ・咳・のどの痛み・あるいは鼻水を治すことはできません。
○鼻汁の色が透明から黄色や緑色にかわったら、抗生剤が必要になるのでしょうか?
カゼの経過中に鼻汁が濃厚になったり色が変わったりするのは普通のことです。
○どうしたら、ウイルス感染か細菌感染か知ることができるのでしょうか?
あなたの主治医におたずねください。でも忘れないでください。感冒(カゼ)はウイルス感染が原因です。そして抗生剤で治療してはいけません。
米国小児科学会のパンフレットは医師にとっても厳しい内容です。