院長コラム

予防接種を受けるとき

ワクチン(予防接種)

 予防接種に出かけると赤ちゃんは必ず診察を受けます。のどをみられて、胸の聴診を受けます。その後に予防接種についての説明を受けて保護者の同意を得た上ではじめて予防接種が受けられます。
 なぜこのようなことを行うのでしょうか。私が子どもの頃は、みんな一列に並べられて診察も、説明もなく予防接種を受けていました。当時は日本脳炎や、ポリオが大流行をしていて病気に対する恐怖が子ども心にもはっきりありました。私は注射は痛くて怖いけど病気になってしまったらもっと大変なんだと思って受けていたのを覚えています。

 しかし時代は変わり改良を繰り返されたワクチンで重症な感染症は激減してきました。ポリオも今後10年程度で天然痘と同様に地球上から消滅すると予想されています。そうすると当然病気にかかる心配より予防接種の副作用のほうが心配になってきます。いろいろなメディアから予防接種の副反応についてのニュースを耳にすればお母さんの不安がつのるのも無理ないことです。

 極端ないいかたをすれば予防接種にはすべて副反応の可能性があります。予防接種の中で不活化ワクチン(三種混合、日本脳炎、インフルエンザワクチンなど)は生きている菌は含まれていませんが、ワクチン成分による異物反応で注射したところが赤くはれたり、熱を持ったりすることがあります。生ワクチン(BCG、ポリオ、麻疹、風疹、おたふくカゼ、水痘など)は、弱毒化した菌やウイルスにかからせるわけですから、もとの病気の症状が軽く出ることがあります。しかしこれは病気のリハーサルですから軽い症状が出るのはちゃんと免疫がついた証拠と考え、おちついて見てやってください。

 現在使われているどのワクチンも本物にかかるよりはるかに有益と判断されるまで改良されています。また接種にさいしては詳しく説明し赤ちゃんの体調を見るための診察をおこなっています。こうした努力が積み重ねられているのです。

 予防接種は危険だ、自然にかからせるのが一番よいというのはちょっと乱暴なように思います。かかってからではもう治療法のない病気はワクチンで予防してあげるべきでしょう。

※ 本コラムの掲載内容は当時の小児医療から記載しているものです。現状と異なる場合もございますので、ご了承ください。