子供を抗生剤(抗生物質)の危険から守る
●抗生剤(抗生物質)の大量使用国・日本
日本は世界でも有数の抗生剤の大量使用国です。抗生剤は細菌による病気の治療に欠かせない薬ですが、有害になることもあります。
●ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチン
子ども(こども)の命に係わる細菌感染症の多くはヒブと肺炎球菌が原因です。 このワクチンの普及で、すぐに抗生剤が必要な病気が事実上無くなりました。このため、抗生剤の使用が大幅に減るはずですが、実際には減ってはいません。
●ヒトと細菌は共存しています
細菌は病気の原因にもなりますが、ほとんどはヒトに有益で、咽(のど)や皮膚、腸に無数に住んでいます。腸には約5百種類の細菌が住み体重の2%にもなります。10㎏の赤ちゃんでは200gが細菌なのです。腸内の細菌は病気の原因となる細菌の侵入やアレルギーを防ぐ効果があります。
●抗生剤による病気
抗生剤は腸内の有益な細菌まで殺してしまい、さまざまな病気の原因となります。
【喘息】
0歳の子どもに2~3回抗生剤を飲ませると1・5倍、4~5回飲ませると2倍も喘息になりやすくなります。
【幽門狭窄】
胃の出口(幽門)が狭くなり手術が必要な病気です。赤ちゃんがマクロライド系の抗生剤(クラリス、クラリシッド等)を飲むと10倍も発病しやすくなります。
【炎症性腸炎】
慢性の下痢や血便がみられる難治性の病気です。一部は抗生剤が原因とされています。
【川崎病】
世界一日本の子どもに多い謎の病気です。抗生剤による腸内細菌の変化が原因ではないかと疑われています。
●ウイルスには抗生剤は無効です
咳や鼻水、副鼻腔炎、中耳炎もほとんどは細菌ではなくカゼに伴うウイルスの感染が原因です。ウイルスによる病気には抗生剤は効果がないだけでなく、むしろ有害です。
●抗生剤の使用が減らない訳
日本では子どもの日常的な病気、例えば「とびひ」や「ものもらい」、「副鼻腔炎」、「中耳炎」などは皮膚科や眼科、耳鼻科などでも診てもらえますが、海外では全て「小児科」か「家庭医」で診ています。皮膚科や眼科、耳鼻科などは特殊な検査や手術のために総合病院にだけあります。日本では多数の診療科で抗生剤が処方されるため、子どもの抗生剤を減らすことが難しいのです。
米国の小児科学会と家庭医学会は共同して医師や患者向けに抗生剤の使用を減らすための提言を繰り返しています。日本の学会も見習ってほしいですね。
私たちのグループで作成した抗生剤の適正な使用のための
ガイドランを紹介します。
医師向けに作成していますがお役にたてると思います。
「小児上気道炎および関連疾患に対する抗菌薬使用ガイドライン」http://www004.upp.so-net.ne.jp/ped-GL/GL1.htm