院長コラム

ヒブ・小児用肺炎球菌ワクチンの効果

ワクチン(予防接種)

ヒブと肺炎球菌ワクチンの無料接種が開始されて3年たちました。そのすばらしい効果についてお話しします。

●髄膜炎の減少

髄膜炎は脳を包んでいる髄液の中に細菌が侵入して発症する最も重症の病気です。このような重症な細菌感染症のほとんどがヒブと肺炎球菌が原因です。
ヒブ髄膜炎は年間1,500例が発症していましたが、ワクチン導入後は事実上0例となりました。肺炎球菌髄膜炎は年間300例発症していましたがワクチンの導入で30例程度にまで減ってしまいました。

●細菌性肺炎の減少

肺炎にはウイルスによる肺炎と細菌による肺炎があります。抗生剤で治療ができる細菌性肺炎の大半は肺炎球菌が原因です。肺炎球菌ワクチンの導入で細菌性肺炎が80%以上減少しました。当院でも細菌性肺炎は年間10例程度ありましたが、最近は1例ほどになっています。

●重症中耳炎の減少

耳が痛くなる中耳炎はウイルス感染(カゼ)が原因ですが、一部は肺炎球菌が侵入して重症化します。抗生剤や鼓膜切開が必要となる重症中耳炎が以前は1%程度みられていましたが、ワクチン導入後は0.1%以下に減ってしまいました。

●抗生剤の必要がなくなった!

熱が出ると肺炎や髄膜炎の予防のために抗生剤が使われていました。しかし、ヒブと肺炎球菌ワクチンで重症な細菌感染症は激減したため重症な病気になることを心配して抗生剤を飲ませる意味は無くなりました。
ワクチン導入後は一人の稀な髄膜炎の予防のために数万人以上に抗生剤を飲ませることが必要となります。一万人以上に抗生剤を飲ませると、抗生剤による命に係わる重症な副反応がでる頻度のほうが高くなってしまいます。
一人の肺炎の発症や中耳炎の重症化の予防のためにも数千人に抗生剤を飲ませなければなりません。数千人に抗生剤を飲ませると抗生剤による重症な副作用の発症のほうが多くなってしまいます。

●抗生剤は待ってから使用します

熱がでたとき肺炎の予防に抗生剤を飲ませることに意味はなくなりました。
耳が痛くて中耳炎になってもすぐに抗生剤を飲ませる必要がなくなりました。抗生剤で重症化を防ぐ頻度より、重症の副作用の頻度のほうが高くなるからです。
熱がでたときや耳が痛くて中耳炎になったときに大切なことは、すぐに抗生剤を飲ませることではありません。慎重に経過をみて、診断がついてから治療するのがベストです。

※ 本コラムの掲載内容は当時の小児医療から記載しているものです。現状と異なる場合もございますので、ご了承ください。