中耳炎は咳や鼻水と同じカゼの症状の一つです
中耳炎は特別な病気ではありません
中耳炎を心配されるお母さんが多いようですが、咳や鼻水などのカゼの子どもの耳を診ると30%は中耳炎になっています。つまり、中耳炎は咳や鼻水と同じでカゼ症状の一つなのです。カゼの咳や鼻水が自然に治るように、中耳炎も自然に治ります。
中耳炎は心配な病気?
肺炎は?
1950年までは肺炎で毎年数万人の子どもが亡くなっていましたが、最近は20~30人程度まで減っています。ほとんどは慢性の肺の病気の子どもがRSウイルスなどのカゼに罹ったときです。RSウイルスなどの肺炎では酸素が必要なため入院となることがありますが、昔死亡が多かった細菌性肺炎は外来で抗生剤の点滴で治せます。
中耳炎は?
1950年までは耳の奥の骨にまで細菌が入る重症の中耳炎が10%ほどありましたが、現在は1万例に1例ほどで、ほとんどは外来での抗生剤の点滴で治せます。また、中耳炎で耳が聞こえなくなることは決してありません。
肺炎や重症中耳炎が減った理由は?
抗生剤(抗生物質)が使われるためという意見もあります。しかし、北欧の子どもには日本の10分の1しか抗生剤が使われていません。また、使われる抗生剤も日本には既にない古い抗生剤です。それでも、肺炎も重症中耳炎も日本と同様に減っています。子どもの栄養状態や衛生状態が改善されたことが理由です。
中耳炎は治療を急ぐ病気ではありません
治療が遅れると、重症化したり慢性化したりすることを心配されますが、治療が数日遅れても経過は変わりません。耳痛があれば解熱剤を使ってください。痛みは30分程度で治まります。耳だれが出たときはガーゼなどでふいて、翌日かかりつけの小児科を受診してください。
オランダの治療方針
海外で広がっているオランダの中耳炎治療を紹介します(一部修正)。耳痛や熱もないカゼのときに見つかる中耳炎に、治療の必要はありません。耳痛や熱がある中耳炎では2~3日は解熱剤だけで、耳漏があるときは1週間は耳を洗うだけで経過をみます。耳痛や熱や耳漏が続けば血液検査を行い、細菌感染が疑われるとき(100人に5人ほど)にだけ抗生剤を飲ませます。それでも耳痛や熱が続くとき(1000人に5人ほど)には抗生剤の点滴を行います。これでも熱や耳痛が続くとき(1万人5人ほど)には鼓膜切開を行います。経過観察、抗生剤投与、鼓膜切開と順に行うことで、過剰で不必要な治療を避けて安全で適切な治療ができます。
抗生剤の使用は慎重に
海外から日本の子どもへの抗生剤の多用(海外の10倍)が問題だと指摘されています。 中耳炎や副鼻腔炎もカゼの症状の一つで、ほとんどは自然治癒していきます。子どもへの抗生剤の使用は慎重でなければいけません。