子供の急性中耳炎の治療は必要ですか?
急性中耳炎の治療は必要?
急性中耳炎の治療が見直されています。従来の「抗生剤・抗生物質」や「鼓膜切開」などの治療効果は少なく、急性中耳炎の多くは自然治癒することが解ってきたからです。海外では、過剰な治療を避ける治療方針が実行されています。
中耳炎は急ぐ病気ではありません
耳が痛くなって救急病院を受診しても、診察のときまで痛みが続いている子どもはほとんどいません。暗い夜の部屋から、明るい診察室へ入ると痛みは消えてしまうようです。
治療が遅れても問題はありません
中耳炎の治療が遅れると耳が聞こえなくなるのではと心配されます。しかし、治療が数日遅れても中耳炎の経過は変わりません。耳漏(耳だれ)が出ても急ぐ必要はありません。
緊急な鼓膜切開は必要ありません
中耳炎のとき、鼓膜は赤く充血し、鼓膜の内側の中耳に液が溜まっています。このため、鼓膜を切開して液を出す鼓膜切開がおこなわれています。しかし、炎症で充血している鼓膜を切開すると痛みが増すだけです。また、中耳に溜まっている液は耳管を通って鼻に流れ出すため耳痛は自然に治まっていきます。
痛み止め(解熱剤)を使ってください
耳痛があるときは鎮痛解熱剤のアセトアミノフェン(アンヒバ、カロナールなど)やイブプロフェン(ブルフェン、ユニプロンなど)を使ってください。痛みは30分ほどで治まります。
耳だれ(耳漏)が出てきたときもあわてないでガーゼでふき取り、翌日かかりつけの小児科か耳鼻科を受診してください。
中耳炎の治療は?
中耳炎のほとんどは、「抗生剤」を使っても使わなくても、また「鼓膜切開」をしてもしなくても自然に治ることが解っています。このため、海外では「抗生剤」や「鼓膜切開」を制限し、過剰な治療を避ける治療が行われています。
オランダの治療方針
20年前から実行され、世界の中耳炎の治療を変えた治療方針を紹介します。
耳痛や熱があるときには2日程度は痛み止めだけで様子をみます。耳痛や熱が続くときにだけ(10%程度)「抗生剤」を飲ませます。これでも痛みや熱が続くときにだけ(1%程度)「鼓膜切開」を行います。
「経過観察」、「抗生剤」、「鼓膜切開」と順番に行うことで、安全性に配慮しながら過剰な治療を避ける合理的な方法です。
なぜ抗生剤が効かないの?
中耳炎は細菌感染で発症するのではなく、ウイルスと細菌がともに感染して発症することが分かってきました。抗生剤は細菌には効果がありますが、ウイルスには全く効果がありません。このため、抗生剤を使って細菌を死滅させても、ウイルスによる炎症が続くため抗生剤の効果が少ないのです。多くの中耳炎は抗生剤を使わなくても、自然に治っていきます。
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