かかりつけ小児科医が必要です
日本には「かかりつけ医」制度がありません。一人の子どもの症状は関連していて、体の一部だけの医療はむしろ危険です。子どもが多くの科で診療を受けているとき、誰がその子の命や健康に責任を持つのでしょうか?現状では責任をとる医師はいません。これはとても恐ろしいことです。子どもの発達や健康をすべて把握し最後まで責任をとる「かかりつけ小児科医」を持つことはとても大切なのです。
2カ月前の小児科受診のすすめ
1カ月健診から4カ月健診の間の2カ月前の小児科健診で重要な病気の見逃しを避けることができます。1カ月健診で見逃されやすい病気には、「あざ」や「臍ヘルニア」(ともに年間10万人程度発症)、「股関節脱臼」(2千人程度)、「心臓病」(3万人程度)、「胆道閉鎖症」(200人程度)などがあります。「あざ」の一部は生後2カ月前であれば完全に消すことができます。手術となることがある「臍ヘルニア」もこの時期であれば圧迫療法が有効です。股関節脱臼もエコーで診断し予防ができます。軽度の黄疸でも1カ月を過ぎていれば胆道閉鎖などの肝臓の病気の検査が必要です。
このような病気を見逃さないためにも2カ月前に小児科で健診を受けることが必要です。
福岡市の取り組み
福岡市では出生前後の子育て支援制度が始まりました。希望されれば、産科の1カ月健診などで「小児科」を紹介する制度です。
初めてのお子さん、育児、病気、予防接種などに不安がある方は、「小児科」を受診して、小児科医やスタッフに会って話を聞くことができ、2カ月前の健診も同時にできます。
年齢による対応の違い
子どもの病気は成人と異なり、年齢により対応が大きく変わります。小児期のさまざまな病気の自然経過を知っているのが小児科専門医です。
薬も年齢により使用制限があります。生後6カ月までで最も死亡が多い病気は突然死で年間250人ほど亡くなっています。突然死と薬との関連が解り、米国ではこの時期の子どもへのカゼ薬(咳、鼻、痰、解熱剤など)の投与を禁止しました。このような子どもの健康と医療に関する知識を持つのが小児科専門医です。
かかりつけ小児科のすすめ
海外では、すべての子どもは「かかりつけ医」を持っています。健診や予防接種だけでなく、通常の子どもの病気はすべて「かかりつけ医」がみています。中耳炎や副鼻腔炎などの耳や鼻の病気。おむつかぶれや湿疹、とびひ、軽症のやけどなどの皮膚の病気。目ヤニやものもらいといった目の病気などです。他の科の受診は「かかりつけ医」が判断して紹介する制度です。
日本でもすべての子どもが「かかりつけ小児科医」を持つことをおすすめします。
※子づれ DE CHA・CHA・CHA!174号(2017.1.10)発行再掲載