院長コラム

ロタウイルスワクチンと不活化ポリオの登場

ワクチン(予防接種)

 日本のワクチン状況が急激に変化しています。世界に20年も遅れてヒブと肺炎球菌ワクチンが公費負担となったばかりですが、今年度中にロタウイルスワクチン、来年度中に不活化ポリオワクチンの導入が予定されます。

●ロタウイルス胃腸炎

乳幼児に多い「嘔吐下痢症」で最も重症なのはロタウイルスによる胃腸炎です。嘔吐や下痢が激しく重症の脱水を起こします。また,痙攣や脳症を起こすこともあります。乳児は重症になりやすいので注意が必要です。

●ロタウイルスワクチン

 今年度中に導入されますが,重症のロタウイルス胃腸炎の発症を90%も減らします。

・投与方法…口から飲むワクチンです。生後6週以降に1回目、4週間以上あけて2回目を内服しますが、生後5ヵ月までとなっています。初回は生後2ヵ月でヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンとの同時接種、2回目は生後3ヵ月で三種混合ワクチン、ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンとの同時接種がすすめられます。

・接種価格…しばらくは任意接種となるため、1回に1万円程度かかります。

●ポリオ

 カゼ症状の後に手や足に麻痺が起こり、まれに死亡することがあります。日本では1950年代には毎年数千人、1960年には5000人以上が発症しましたが、旧ソ連からの生ワクチンの緊急輸入で翌年から、事実上消えてしまいました。

・生ワクチン…日本での経験からも有効性が高いワクチンです。ただ,体内でウイルスが変異し毎年2~3人ほどワクチン接種者や周りの人に麻痺がでています。

・不活化ワクチン…先進国では安全な不活化ポリオワクチンが普及しています。日本でも単独の不活化ポリオワクチンと三種混合ワクチンと一緒になった4種混合ワクチンが来年度中に導入予定です。

・投与方法…三種混合ワクチンと同時接種で計4回の接種になります。

・接種価格…単独ワクチンで1回5000円程度ですが、早期に無料化されることが期待されます。

●不活化ポリオワクチンの個人輸入

 いくつかの病院で不活化ポリオワクチンが個人輸入で接種されています。現状では~個人輸入で接種する、~A生ワクチンを接種する、~B認可予定の不活化ワクチンを待つという3つの選択があります。ただ、~@の場合は個人輸入なので副作用が生じたときの保障がない、~Aではごく稀な麻痺の可能性がある、~Bでは待っている間にポリオワクチンの接種率が下がり本当にポリオが流行する危険性があるなどの問題があります。どれがベストなのかみんなが納得できる答えはありませんが、私はどれでも良いと考えています。

※ 本コラムの掲載内容は当時の小児医療から記載しているものです。現状と異なる場合もございますので、ご了承ください。