院長コラム

股関節脱臼のエコー(超音波)診断

股関節脱臼のエコー

股関節脱臼とは?

乳児健診のとき,小児科医は赤ちゃんを寝かせて,両足を開いたり閉じたりしています。これは股関節脱臼のチエックをしているのです。
股関節は足の骨(大腿骨)と腰の骨(腸骨)をつなぐ関節ですが,赤ちゃんでは股関節の形成が悪いことがあります。
放置すると脱臼して,歩くときに足を引きずったり,歩けなくなったりします。

診断は?

乳児健診のときに足の開き方や左右の足の長さの違いなどで判断します。疑わしいときは整形外科を紹介して,レントゲンで診断します。? しかし,健診での判定は医師の感覚だけなので,精密検査になる赤ちゃんの大半は正常で不必要なレントゲンの被爆を受けることになります。またどんなにベテランの医師でも20%程度が見逃します。

レントゲンとエコー診断

レントゲンでは軟骨が写らないため軽症の脱臼が診断できません。またレントゲンによる被爆も避けられません。
エコーが股関節脱臼の診断に最も有効です。レントゲンでは見逃されるような軽症例から重症例まで10秒程度で確実に診断できます。
図1は両側とも正常の股関節で,足の骨(大腿骨)が腰の関節(腸骨臼蓋)の中にきちんと入っています。

図1 正常の股関節
左右ともに大腿骨が,腸骨の関節(臼蓋)に入っている。

図2は右の股関節脱臼です。関節の形成が悪いため腸骨の臼蓋の辺縁が丸まって見えます。このため,大腿骨が腸骨の臼蓋からずれて上に転移(脱臼)していることが解ります。

図2 左側の股関節脱臼
腸骨の関節面(臼蓋)の辺縁が丸くなり,大腿骨が上にずれて脱臼している。

治療は?

早期に発見できれば、オムツの当て方に気をつけ,常に両足を開くようにするだけで治ります。発見が少し遅れても軽症であれば装具(リーメンビューゲル)を付けて足を開いた状態で固定することで治ります。脱臼がひどければ入院して器械で足を牽引します。発見が遅れると手術が必要になることがあります。このため早期に確実に診断することが大切です。

エコー診断の普及を!

すべての赤ちゃんが乳児健診でエコー検査を受けられるようになれば、不必要なレントゲン撮影を避けることができ、見逃しもなくなります。エコー検査が普及してほしいですね。

※ 本コラムの掲載内容は当時の小児医療から記載しているものです。現状と異なる場合もございますので、ご了承ください。