院長の研究発表

院長の研究発表

エコー検査による新しい診断方法

耳下腺炎が腫れる疾患には、おたふくかぜと反復性耳下腺炎があることが従来知られていました。この2つの疾患を早期に診断することは不可能でしたが、超音波で簡単に診断できることを初めて報告しました。また、幼児に多い股関節炎の診断はレントゲンでは不十分でしたがエコーで簡単に診断できることも初めて報告しました。

流行性耳下腺炎と反復性耳下腺炎の鑑別における超音波検査の有用性.外来小児科学会誌2002年
境界領域におけるエコー ― 反復性耳下腺炎・単純性股関節炎 ― 小児科診療 2003年

乳幼児の発熱の研究

歳未満の子どもたちの発熱のなかに、細菌性髄膜炎などの重症細菌感染症の前段階である潜在性菌血症があることを日本で初めて報告してきました。カゼと思われるような比較的元気な子どもたちの血液中にインフルエンザ菌b型(Hib)や肺炎球菌などの細菌が侵入していることがあるのです。これは、私の仲間の小児科医との共同研究から生まれた大きな成果です

小児科外来におけるoccult bacteremiaの前方視的調査. 小児科学会誌 2004年
小児科開業医で経験したoccult bacteremia23例の臨床的検討.小児科学会誌 2005年

細菌性髄膜炎の早期診断の研究

インフルエンザ菌b型(Hib)や肺炎球菌などの細菌による重症感染症である細菌性髄膜炎の早期診断は、現在の医療水準では不可能であることを仲間の小児科医と協同で明らかにしました。しかし、これらの病気は、Hibワクチンや肺炎球菌ワクチンで予防可能なのです。

インフルエンザ菌・肺炎球菌髄膜炎の早期スクリーニングの可能性.小児科学会誌 2006年

子どもの中耳炎

日本では、子どもの中耳炎診療についての研究がほとんどありませんでした。子どもの中耳炎の診療方法、中耳炎の原因菌の研究、中耳炎に対する抗生剤の効果などについて研究発表してきました。
また、これらの研究から小児の中耳炎診療のガイドラインができました。

小児科医のための中耳炎診療 小児内科 2006年
中耳炎治療における抗菌薬の有効性 第13回日本外来小児科学会. 仙台. 2003年
外来小児科医のための中耳炎の診断と治療 第11回日本外来小児科学会. 宇部. 2001年
小児科医のための中耳炎診療マニュアル.外来小児科2000年小児内科 2002年
急性中耳炎の起炎菌と抗菌薬耐性および臨床経過 外来小児科 1999年

抗生剤の適正使用の調査研究

外来で抗生剤は最も使用頻度が高い薬です。しかし、日本は抗生剤の使用が最も多い国となり、抗生剤が効かない耐性菌が急増しています。
このため、抗生剤でしか有効な治療法がない重症の細菌感染症の治療が困難になってきています。仲間の小児科医5人で抗生剤はどのように使用すべきかのガイドラインを作成しました。幸いにも多くの小児科の先生方から高い評価を受けています。
英語版も作成して世界の小児科医に評価をお願いし、非常に高い評価を得ています。

かぜ症候群と抗菌薬: かぜ症候群のリスク評価と抗菌薬の適正使用 小児内科 2004年
小児上気道炎および関連疾患に対する抗菌薬適正使用ガイドライン 外来小児科学会誌2005年
急性中耳炎の「ガイドラインのようなもの」で目指したもの 外来小児科 2006年

食物アレルギーの研究

子どもたちの食物アレルギーの保有状況とアトピー性皮膚炎の関係について研究。
10ヵ月児の約半数で食物アレルギーがみられますが、大部分は2歳までに自然治癒していきます。どのように除去を開始し、どのように除去を解除するのかをワークショップで作成しました

プリックテストでみた10ヵ月児のアレルギー感作状況 第9回日本外来小児科学会 大阪1999年
アトピー性皮膚炎児における除去食療法マニュアル 第10回日本外来小児科学会 大宮2000年

主な著書

開業医の外来小児科学 第5版 南山堂 2007年 編集委員 分担執筆

「耐性菌の時代における抗菌薬の適正使用」「肺炎球菌とインフルエンザ菌感染症」「診療手技」「外来検査」

今日の小児診療指針 医学書院 2006年 分担執筆

「発熱児の診療 リスク評価と抗菌薬の適正使用」

子ども医学館―キッズ・メディカ安心百科 小学館 2001年 分担執筆

「耳・鼻・のどの病気」

見逃してはならないこどもの病気20 医学書院 2000年 分担執筆

「こどもの中耳炎」

小児科研修医ノート 診断と治療社 1999年 分担執筆

「口内炎」「中耳炎」